2019年12月27日
目が覚めると、陽の昇る時刻だった。強風のため外には出られないが、潮の被った窓ガラス越しに眩い太陽を見た。
朝ごはんは日清カップヌードルしょうゆ、船上で食べるカップ麺は何て美味しいのか。この相乗効果は恐ろしいくらいに高い。
アナウンスは都井岬沖を過ぎる事を告げていた。あぁ、目の前には九州がそびえ立つ、間もなく上陸だ。
船は着岸した。程なくして、徒歩にてご乗船のお客様は下船開始。バイクは時間がかかるとの案内だったが、思いのほか早く案内があり、慌てて着替えたら愛車のもとへ。
重心を下げるべく取っていた荷物をくくりつけたら、セローに跨がりキーをひねる。静かにエンジンが震えている。さあ、下船だ。
降板から出る瞬間の眩い開放感が好きだ、滑らないようスロープを下ったら、タンデマーを迎えに行く。基本的に下りたらそのまま港から出ていくものであるため、下船口から案内所まで行くルートの案内は無い。ここ、志布志港も同様だ。走りにくい。
しかし、大阪から一晩寝ていれば、志布志に着くなんて凄い話だ。利用は三度目になるが、なんて便利なフェリーなんだ。大阪に住んでいたら週末利用で来たって良い。
それにしても、暑い。九州南部とは言え、師走は師走、12月が終わろうとしている冬真っ只中だというのに常夏だな。そんなことを思いながら、冷えたヨーグルッペで九州感を漂わせながら乾杯した。
この時点で船にいたであろう車や乗客たちは皆無だ。のんびりと走り出す、まず向かうは志布志に来たら外せない「志布志市志布志町志布志の志布志市役所志布志支所」へ。何があるわけではない、とにかく志布志な看板の写真を撮るだけではあるが、それが良い。
いざ南下だ!と、進むも”日本一たい焼き”とやら屋号を見つけてしまい、吸い込まれてしまった。安納芋あんとカスタード味をチョイスし、鹿児島感のある安納芋あんの焼き立てを頂く。大それた屋号を掲げるだけある、日本一かどうかはさておき、あんこも生地も絶品だ。
相変わらずなかなか進まない、今度は道の駅くにの松原へ。こちらのカブトムシの闘いを観なくては始まらない。何が始まらないのかわからないが、観たくなる巨大カブトムシの対峙。ご挨拶をしたら、国道448号線へ戻り、いよいよ南下。
くにの松原を横目に気持ちの良いストレートを走る。肝属川を越える直前、折れた国道を左折すると、左折した直後に気になるものが視界に入ってしまう。”さつま揚げ”のノボリだ。立ち寄ったのは「坪山水産」、鮮魚店で食べる揚げたてさつま揚げ、美味しいに決まっている。その場でパクり!今まで食べたさつま揚げのそれじゃない、何だこれは。いくつか持ち帰りにもして、ニヤニヤしながら出発した。今度こそ肝属川を越え、走り進む。
ここからの国道448号線はヤバイ、語集がないのかと思われるかもしれないが、ヤバイ。昔、タイに行った時に象に乗ったのだが、一緒に乗ったタイ人の象使いは、しきりに「ヤバイ、ヤバイ!」と、笑いながら連呼していた。日本人は興奮するとヤバイと言うのだ。そんな道。
内之浦の町までは細かなワインディングが続く、展望は少ないがとにかく楽しい。内之浦の町を過ぎると、ダイナミックになる。広い道に、大カーブが続く。JAXAがあるため、大型トレーラーも通れるようにしているのかもしれない。
そして、岸良の町が近づいて来たら警戒して欲しい、岸良海岸の白い浜と青い海が眼下に広がる瞬間がたまらないから見逃してはいけない。この走りながらに見る景色は、全国で見ても最高峰であると思っている。
海岸の反対岸まで行けば展望台もある。ここで、お昼にする。コンビニのおにぎりと坪山水産で仕入れたお刺身とさつま揚げを食べる、おやつにはたい焼きもある。贅沢だろう。ただし、空を舞う猛禽類には常に注意が必要だ。急降下してきたら贅沢タイムは終わってしまう。
お腹を満たしたところで、再出発。ここからも凄い道なので、楽しもうではないか。県道74号線に進むか悩んだが、今回は先を急ぐのでパス。またゆっくり来よう(この道はほんとに時間がかかる)。
田代麓の交差点まで快走したら、県道68号線に舵を切る。雄川の滝も今回はパス。また来る理由が1つまた1つと増えていく。
これまた快走路なのだが、途中右手に見えてしまった”やきいも”の文字。もうお分かりかと思うが、こうやって食べ物に釣られてしまい、どんどん進まなくなるのだ。お店は無人商店で、その名も「佐多物産」。
100円玉を3枚握りしめ、”料金はここへ”に投入する。保温器でホカホカに温められたさつまの芋はホクホク甘々で、心までホカホカ。
何だか、佐多岬が遠い。物理的な距離はもとより、なんか全然先に進まない感じがする。
とにかく南下だ、県道68号線は続く、県道564号線に一瞬入るが再び県道68号線だ。交差する辺りでは、不思議な奇石を見つけた。それでは、半島を東から回り込む。静かな磯を眺めて走ると、夫婦岩も鎮座していた。
なんだか賑やかしい看板の残り10kmポイントを走り過ぎ、いよいよ大泊までやってきた。
ここ大泊には本州最南端のキャンプ場がある、大泊野営キャンプ場だ。以前佐多岬に来た際は佐多岬に寄った後、陽が暮れてしまい急遽このキャンプ場に泊まることにしたという思い出がある。ご飯も買って無く、ホテル佐多岬にお風呂を借りたついでにお土産屋さんで夕飯になりそうなものを買い込む魂胆だった。ところが、現金が全然無い上にカードが使えないときたもんだ。
入浴料を引いた額でギリギリを計算し、とんこつラーメンと水を買うことができた。この時のドロドロの素ラーメンの美味しさったら忘れられない。
そんな思い出のキャンプ場を今回は横目に後にし、佐多岬ロードパークを最南端に向かって走る。
ここからは南国気分だ、いきなり世界が変わるのが面白い。ガジュマルが連続して生い茂っている道は本土ではここくらいだろう。道自身も走りごたえがある、流石は最南端の突端への道だ。
終点目前だというところに、新しくできた北緯31度の碑がある。碑が変わってからは初めて訪れたが何だかごつい、桜島がモチーフなのかな?以前の木のものは味があって良かった。とは言え、もちろん写真を撮っておく。用が済んだら、残りの数百メートルを走って駐車場に到着。
巨大なガジュマルは健在、根っこに共存する申し訳程度の佐多岬の看板もある。無くなったのは本土最南端の電話ボックスか。
売店も新しくなっていたので物色しよう、品揃えは少ないが新しくラインナップされていたステッカーや証明書をゲットした。
ここからは徒歩で最南端を目指すことになる。まずはトンネル、このトンネルを抜ける瞬間は好きだ、なんだかトンネルでワープするかのような錯覚を感じられるから。それから遊歩道を進む、途中の神社も健在だ。道は少し変わって、バリアフリーなのか階段を使うことなく進むことができるようになっていた。
いよいよ展望台にやってきた、駐車場からは10分くらいだろうか。こちらも新しい、前回は改修中、前々回は崩壊した先代の姿があった。屋上からは大海原が一望できた、薄明光線がくっきりとしていて絶景だ。これから目指す島々も見えているではないか。ワクワクしてくる。しかし、佐多岬灯台の建つ位置はいつ見ても凄い。本当の最南端はあの辺りなのかな。
いくつか点在していた佐多岬の看板を拝見したら、戻ろう。帰りは何だかあっという間だ、少し寂しいものだが、また来れば良い。
帰ろうと思った頃に一台のバイクがやってきた、横浜ナンバーを見て驚かれたようだが、セローでタンデムなことにはもっと驚いたようだ。前におじさまライダーに我々を見てそれは地獄じゃないかと指摘されたことがあるのだが、意外と快適なんですよ。
ここは最南端、おのずと北上する他ないので、北に向かって走り出した。この看板を見ると、そこまで北上するかよ!と、思う反面、宗谷岬にも行きたくなるが、今は真冬だ、バイクで行く人もいるみたいだが、ひとまず今は行けない。
本土最南端のAコープ(もはや言ったもん勝ち)を横目に北へ。
左手には薩摩富士のシルエットが美しく浮かんでいる。道の駅根占で休憩がてら、そのシルエットに酔いしれた。
ここで、世界は暗闇と化すが、まだ進まないといけない。国道269号線を先へ先へ。お腹も空いてきたが、今日の夜はまだ我慢だ。垂水のGSで満タン給油と、島の備えに1リットルの携行缶へガソリンを入れてもらった。
桜島に入ると、いきなりホワイトアウト。もちろん雪ではない、噴煙だ。対向車のライトで照らされると全く視界が無くなる、これは恐怖だった。幸いなことに、そんな区間も長く続かず、酷いのは風下の付近だけでのようで助かった。
20:00発の桜島フェリーに乗り込めた。うどん屋はもちろんもう開いていない、久々に食べたかったが、仕方ない。
鹿児島に着いたら街の中心街から程近いビジネスホテルにチェックイン、翌朝のフェリーに向けて宿を取っておいたのだが、思ったよりも繁華街の中にあったので、最後はバイクを押す羽目に。少し不安だが、セローは自転車と並んで駐車することになった。
今日は滅多にしない、街のホテル泊なので、居酒屋さんへ足を運んでみることにした。地場産品応援の店提灯を掲げているので間違いないだろう、徒歩1分程度のホテル目の前のお店の暖簾をくぐった。
ここからは鹿児島の幸を楽しむ時間だ、さつま揚げに黒豚、きびなごの天ぷらと、我々のお腹を満たしてくれてた。
食後には島を過ごすための買い出しに歩く、年末で賑やかな天文館を横浜から来た芋い2人が歩く。皆、思い思いに酔っ払っているようで、歩きにくい。
九州おなじみのスーパー、タイヨーの銀座店に着くと、賞味期限と食事回数を照らしながら大量の買い物を楽しんだ。
どうやら、このあたりで飲んだ後はラーメンを〆にする習慣があると言う、それなら習慣にならって食べてみようではないか。昔から地元で愛されているお店、「のり一」というお店に来た。ホテルのほぼ隣だったことも一因だ。先程は結構な行列だったが、もう並んではおらず、すんなり入れた。よくわからないままに食券を買ってみる。着丼は思ったより早かった。
透き通ったスープは家系ラーメンに慣れた舌でなくても薄く感じるだろう薄さ、麺もダルダルだ、申し訳ないが控えめに言っても美味しくない。余程呑んだ後の舌に合うようになっているのかもしれない。
言葉通り、後味の悪い形となったが、明日に備えてそろそろ寝よう。フカフカのベッドに揺られて眠る。
走行距離:232.8km
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